エンゼルスというチーム(2022年版)
労使交渉に揺れたオフだったが、2022年シーズンは最初の2カードがキャンセルされ1週間遅れの開幕となるものの、通常通り162試合で行われることになった。開幕は4月7日となる。エンゼルスはホームにアストロズを迎えての4連戦でスタートだ。
ナ・リーグでもDHが採用され、ポストシーズン進出は例年の10チームから12チームに増加し、各リーグの各地区優勝の6チームに加えて、ワイルドカードが各リーグで3チームずつ進出できる。
エンゼルスとしてはア・リーグ西地区で優勝するか、優勝できなかったア・リーグ12チームの中でベスト3に入る勝率を上げるのが目標になる。昨年の成績に当てはめると、91勝71敗のブルージェイズがワイルドカード3位で滑り込みとなるので、エンゼルスも90勝を目指す戦いになる。昨年は77勝85敗の借金8、最後に勝ち越したのは2015年という低迷中のチームにとっては厳しい戦いになるだろう。
2015年以降の低迷ぶり
知将マイク・ソーシア監督の下、2002年にワールドシリーズ制覇を成し遂げ、その後も2000年台はプレーオフ常連だったエンゼルスだが、プレーオフに出たのは2014年が最後で、この6年はプレーオフ進出どころか勝ち越すことも出来ない低迷が続いている。
2018年オフにマンネリ気味のマイク・ソーシアと契約延長せずブラッド・オースマスを監督を迎えたが、2019年は72勝90敗(勝率. 444)と20年ぶりの90敗を喫し、オースマスはわずか1年で解雇された。2020年は名将の誉れ高いジョー・マドンを新監督に迎えたものの、新型コロナの影響で60試合に短縮されたシーズンとなり、結果は26勝34敗(勝率. 433)とさらに成績を落としてア・リーグ西地区4位に沈んだ。
2021年のエンゼルスの戦いぶり
2021年は通常の162試合に戻ったが、大谷が投打でMVPの活躍を見せたものの、主力であるトラウト、レンドーンが故障で離脱、投手陣はまたしても崩壊で、5月にはアルバート・プーホルスを戦力外にした。
7月末までに52勝52敗と5割前後をウロウロする成績が続くと、チームは事実上プレーオフ進出を諦め、ヒーニー、ワトソンを放出し再建に舵を切った。8月以降は糸が切れたように25勝33敗と大きく負け越し、大谷のホームラン王くらいしか見所がなくなってしまった。挙げ句の果てに大谷からは「もっと勝ちたい」という発言が飛び出し、大谷移籍希望かとメディアをバズらせることになった。
結局77勝85敗、ア・リーグ4位でシーズンを終え、またしても負け越しに終わった。
2021年のチーム防御率は4.69で、ア・リーグでは下から4番目。勝ち頭が大谷の9勝で二ケタ勝利を誰も上げられなかった。さらにブルペンの防御率となると4.59で下から2番目、トップのレイズは3.24なのでブルペンの安定感のなさはメジャーでも最悪に近かった。大谷は二刀流として目の覚めるような成績を上げたが、大谷がいくら活躍しても投手陣がそれ以上に打たれ、「なおエ」(なおエンゼルスは敗れた)が流行語になるほど逆転劇は恒例となった。
2022年のトップ100プロスペクトはわずか1人
エンゼルスからはこの20年近く一流と言えるような投手がほとんど育っていない。サイ・ヤングを狙えるほどの投手と言えば、ジョン・ラッキー、アービン・サンタナ、ジェレッド・ウィーバーくらいしか思いつかない。あとは抑えのK・ロッドくらいか。投手を育てられないチームに未来はないだろう。
投手を育てるのが下手な上にトレードやFAでも投手にはあまり投資してこなかった。オフにシンダーガードと1年21Mの契約を結んだが、これはエンゼルスの投手としては最高金額。これまでは2012年から5年契約を結んだC・J・ウィルソンの5年77.5M(年平均15.5M)が最高だった。
若手が育たない根源にあるのは大物FA選手の獲得(特にFA野手)にのめり込んで、若手の育成がおざなりになってしまったことだ。2010年以降も、数多くの有力FA選手を獲得し大型補強を敢行したが、結果として効果的だったと思われる補強は少なく、トレード下手と言わざるを得ない。そして、トレードのたびに代償として有望若手選手(プロスペクト)を放出してきたため、マイナーが枯渇していった。
2000年台はメジャーでも屈指の質と量と言われたエンゼルスのマイナーだったが、2022年のメジャーのベスト・プロスペクト100人に入っているエンゼルスの選手は21位のリード・デトマースただ一人である。安定して成績上位のチームは下位のドラフト指名権しか得られないのでプロスペクトが少ないのは仕方がないが、低迷が続くエンゼルスでわずか一人だけというのはいかにドラフト戦略がチグハグで、育成も下手であるかの証左である。ドジャースやレイズはあれだけ強いのに、さらにプロスペクトが5人もランクインしているというのに・・・
2021年オフの動き
今オフはMLBの労使交渉がもつれて、FA市場、トレード市場も12月から3月半ばまで動くことが出来なくなってしまった。結果として早めに動いてシンダーガード、ローレンゼン、アーロン・ループらをFAで獲得し、イグレシアスとも再契約したミナシアンGMは素晴らしかった。
しかし労使交渉が合意してからは逆に動きは鈍く、本来ならもう一枚欲しかった先発投手をゲットすることは出来なかった。
他にはカート・スズキと再契約、中継ぎ右腕のライアン・テペラ、アーチー・ブラッドリー、ベテラン内野手マット・ダフィーらをFAで獲得した。しかしいずれも小幅の戦力増強にとどまっている。
そして開幕直前、今年で契約が切れるジャスティン・アップトン外野手をDFA(戦力外)とした。まだ28Mもの契約が残っていたし、DFAするにしてもシーズン前半のどこかでだろうと思っていたので、この時点でアップトンを切る決断をしたのは少々意外だった。