開幕して1ヶ月が過ぎた。ここまでエンゼルスは14勝12敗でア・リーグ西地区の3位につけている。12敗のうちセーブ失敗で落とした試合が7試合もあり、もし強力なブルペン陣があれば西地区を独走していたのだと思うと非常に忸怩たる思いがある。が、逆にこれだけ勝てる試合を落としてもまだ貯金が2つあるというのは今後に希望を抱かせる結果でもある。
この1ヶ月間の主要メンバーの成績を評価してみたい。評価は高い順に、S(最高)、A(優秀)、B(良好)、C(並み)、D(不合格)の5段階とした。
先発投手
何より大谷の安定感が際立つ。間違いなくサイヤング賞を狙える位置につけている。一方でアンダーソン、スアレスの2人は完全に不合格。チームとしては5番手、6番手の先発を誰にするかが悩みの種だ。
大谷翔平(右投げ)評価 S
昨日の試合では5失点を喫したがそれでもエンゼルスの不動のエースで、今や球界を代表する大投手への道を歩んでいる。防御率こそ1.86と悪化してしまったが、9イニング換算の被安打数は2.912本と圧倒的なメジャー1位(2位はストライダーの4.200。絶好調のコールですら5.090)とほとんどヒットを打たれない投手になった。ただ与死球6、ワイルドピッチ5ともメジャー1位で制球力にはやや不安を残している。
タイラー・アンダーソン(左投げ)評価 D
「ドジャース補正」との陰口が聞かれるほど昨年よりも成績を落としている。防御率7.20は昨年ドジャース時代の2.57(キャリアハイ)とは比べるべくもない。3年3900万ドルの契約は大盤振る舞い過ぎに思える。またしてもキャリアハイ成績のベテランと契約してドツボにハマるエンゼルスのお家芸発動だろうか?
パトリック・サンドバル(左投げ) 評価 A
防御率こそ3.16だが、実際にはもっと抑えているイメージだ。時折四球を連発して失点してしまうクセがある。そうなると球数が増えて深いイニングまで投げる事が出来ない。そこを修正できればもっと安定して活躍できるだろう。
ホセ・スアレス(左投げ) 評価 D
昨年後半の数字が良かったためにローテーションを任されているが、今年は炎上を繰り返し、ついに防御率は10.26。4度先発してまだ0勝。被打率 .382はあまりにも打たれすぎだ。少なくとも優勝を狙うチームがローテーションを任せるレベルにない。それに昔からあのでっぷりとした体型で、大谷と対照的に節制の気配も感じられない。マイナーに落とされないのが不思議で仕方がない。いつまで先発のチャンスを与える気だろうか?
リード・デトマース(左投げ) 評価 B
ここまで4度先発して0勝1敗だが、防御率は4.15。まだ若く修業中の身と思えば十分許容範囲だろう。奪三振率は10.38で、チームでは大谷の12.18に次ぐ2位で三振を取る能力が高い。これから調子を上げていけば後半は大きな戦力に化けるかもしれない。
グリフィン・キャニング(右投げ)評価 B
ようやく故障が癒え復帰を果たした。3度先発して1勝0敗、防御率4.11で、WHIP 1.17は先発投手陣では大谷(0.82)に次ぐ第2位、つまりあまりランナーを出さない投手という事だ。今後に期待を抱かせる。
救援投手
厳しい評価が並ぶのが救援投手陣だ。クローザーのエステベスは安定しているが、毎試合投げられるわけではないので、彼が使えない日は誰を抑えにするかがチームの課題だ。
契約が今シーズンまでのループ、テペラの両ベテランはDFAは免れないだろう。一方でこれまでやや信用度の低かったワンツ、デービッドソンは今後大事なシーンで投げるチャンスも増えてくるはずだ。彼らの成長に期待したい。
カルロス・エステベス(30歳、右投げ)評価 A
12試合に投げて防御率1.42は素晴らしい。最近5試合は自責点0だ。今のところは何とかエステベスに繋げれば勝利が見えてくる。このままシーズンを通して安定した投球が出来るかがエンゼルス浮上のカギを握っているだろう。
ジミー・ハーゲット(29歳、右投げ)評価 D
8試合に投げて防御率6.23は厳しい。明らかに昨年よりも変化球のキレが落ち、曲がりも大きくないし、ベースのかなり手前から曲がるようになりバッターに見切られやすくなった。直近の6登板中4試合で失点しており、もはや勝ちゲームで1イニングを任せられなくなってしまいマイナー落ちしてしまった。昨年も一時マイナーに落ちてから這い上がってきたので今年もシーズン後半の活躍を期待したい。
ホセ・キハダ(27歳、右投げ)評価 B
開幕から最初の8登板は無失点でクローザーを任されていた。しかし元々ノーコンの投手で力任せに真ん中をめがけて投げるタイプ。ちょっと歯車が狂うと四球を連発してしまい、そうなると修正が効かない。苦しくなって真ん中に投げた球を狙い打たれるのが関の山だ。今後シーズンが進むにつれて疲労が溜まってくれば失点する試合が増えてくるのは見えている。とてもじゃないが勝ちゲームには投げさせられない。セットアッパーの補強は急務だ。
アーロン・ループ(35歳、左投げ)評価 D
9試合に投げて防御率5.14。救援投手としては完全に失格だ。2021年にメッツで防御率0.95と大ブレークしたがそこがキャリアのピークだった。契約は今年までだ(来年はチームオプション)。35歳という年齢を考えても、遅かれ早かれDFAされるだろう。私としてはあまり試合を壊す前にリリースした方がいいと思うが。
ライアン・テペラ(35歳、右投げ)評価 D
6試合に投げて防御率11.25。現在は右肩の炎症で故障者リストに入っている。例え故障が癒えても35歳という年齢からしてもう期待は出来ない。ループ同様今年までの契約なのでDFAは既定路線だろう。テペラもエンゼルスに来る前はキャリアハイの成績だった。ループ、テペラ、アンダーソン、そしてレンドーン・・・たとえ素晴らしい成績を残したとしても30歳を超えた選手の成績はあまり信用してはならないという見本だ。エンゼルスは何度この失敗を繰り返せばいいのだろう?
ハイミ・バリア(26歳、右投げ)評価 C
相変わらず便利屋的な使われ方から抜け出せない。7試合に投げて防御率3.38は悪い数字ではない。しかし安定しないというか、調子の波が大きいというか、先発でも救援でもロングリリーフでも何でもできるが、いずれも今ひとつという印象が拭えない。脱皮するときが来るのだろうか?
アンドリュー・ワンツ(27歳、右投げ)評価 A
7試合に投げて防御率0.84は素晴らしい(最初の6試合は自責点0)。ただこれまで勝ちゲームではあまり使われず、どちらかというと敗戦処理的な場面での登板が多かった。今後はより重要な場面で起用されると思うが、そういうプレッシャーのかかった試合で力を発揮できるかがカギになるだろう。
タッカー・デービッドソン(右投げ) 評価 B
ここまで6試合で防御率2.40はなかなか良い成績だ。先発は一度もないが、ロングリリーフをこなせるのですでに15イニングを投げている。この成績ならスアレスやアンダーソンの代わりに先発させた方がいいだろう。
野手
投手、特に課題とされた救援投手陣の整備は全くお粗末だったが、こと野手陣に限るとミナシアンGMは非常に良い補強をした。昨シーズンの内外野の選手層の薄さを補うべく獲得したレンフロー、ドルーリー、ウルシェラは3人とも非常に貢献度が高く、戦力を一気に底上げしてくれた。昨年のダフィー、ゴセリン、メイフィールド、ウェイド、ベラスケスらの1割打者が並んだ打線とは全く異なり、リーグでもトップクラスの攻撃陣に生まれ変わった。
ローガン・オホッピー(捕手) 評価 A
開幕前はスタッシのバックアップという位置づけだったが、スタッシがケガで出られない間に攻守で存在感を発揮し、あっという間にエンゼルスの正捕手の座を掴んだ。勝負強い打撃でチームトップの打点を挙げ、まさにエンゼルスの期待の星になろうとしていた。そんなオホッピーが肩の負傷でシーズン終了のニュースを聞いた時は暗澹たる気分になった。神様は何という酷な事をするものだろう。
デビッド・フレッチャー(内野手)評価 D
2021年から5年契約を結んだが、残念ながら成績は下がる一方。元々長打力はないものの、しぶとくバットをボールに当てて安打とし、高い打率を残すスタイルが影を潜めた。早打ちで四球も選べなくなり出塁率は大きく低下。ドルーリー、ウルシェラ、ネトらの新戦力の影に隠れ、ついにマイナー落ちしてしまった。マイナーで相当高い打率を残さないとメジャー復帰は難しいだろう。
ジオ・ウルシェラ(内野手)評価 A
最近こそやや当たりが止まったが、開幕直後は絶好調でエンゼルスの打線を支えた。守備の能力も高く、内野のレギュラーを獲得したと言っても良いかもしれない。
ブランドン・ドルーリー(内野手)評価 A
開幕直後はあまり当たっていなかったが、最近は良いところでホームランを打っている。打率はまだ.254だがOPSは .824と好調エンゼルス打線を支えている一人だ。正一塁手のウォルシュの故障が長引いているうちに内野のレギュラーになった感がある。
ジェイク・ラム(内野手)評価 D
招待選手としてスプリングトレーニングに参加していたが、ウォルシュが開幕絶望となった事で急遽メジャー契約した32歳。15試合で打率 .214、OPS .576、1本塁打は打撃が期待される一塁手としては不合格。2016年、2017年には本塁打29本、30本を記録したがそれももはや過去の話のようだ。年齢も高くマイナーオプションも残っていないので、よほどの大爆発がない限りウォルシュが復帰すればDFAは避けられないだろう。
アンソニー・レンドーン(三塁手)評価 B
何よりも健康で試合に出続けられている事が一番だ。まだ本塁打はなく、打率もようやく2割5分を超えてきたところだが、チャンスで確実に打点を挙げる技術は健在。守備にも定評がある。レンドーンが打率3割を超えてきたらさらにエンゼルス打線の攻撃力は増すだろう。
ルイス・レンフィーフォ(内野手)評価 D
去年後半の活躍は何だったのかと思わせるほど攻守で後退してしまった感がある。2割に届かない打率、失策はすでにチームトップの4つを数えている。元々能力任せな所があり、野球IQの高いタイプではないが、もう少し自分のプレーを見つめ直さないと出場機会は大きく減っていくだろう。
マイク・トラウト(センター)評価 S
今年も打率は3割を超え、OPSも .963と高い水準の打撃を維持している。レンドーン同様に故障なく試合に出続ける事が最大の課題だろう。
テイラー・ウォード(外野手)評価 C
昨年4月の無双ぶりはあまりに衝撃的だったが、今年はやや苦労している。打率は.224でOPSも.700に届いていない。昨年も打てる時期と打てない時期が極端だったので、今は打てない時期と割り切って今後の爆発を期待したい。
ハンター・レンフロー(外野手) 評価 A
本塁打7本と打点20はともにチームトップだ。レンフローの獲得は非常に大きかった。去年のレフトは攻守に安定性を欠くアデルだったのだから大幅な戦力強化だ。今後も今の調子で打線を引っ張って欲しい。
大谷翔平(DH)評価 A
2021年の47本塁打の活躍があまりにも衝撃過ぎて、現在の本塁打6、OPS 878という数字は物足りなく感じてしまう。しかし圧倒的なパワーを持つ大谷が中軸に座る事で相手の投手に大きなプレッシャーを与えている。守備シフトが禁止された今年は打率もまだまだ上がっていくはずだ。
ブレット・フィリップス(外野手)評価 C
元々打撃は期待されておらず、あくまでも外野の守備要員。本来なら第4の外野手としてモニアックやアデルをベンチに入れたいところだが、そうするとほとんど試合に出る機会がなくなってしまうので彼らはマイナーで試合経験を積ませる選択をしている。もし外野のレギュラーの誰かが故障すればどちらかがマイナーから呼ばれてスタメンとなるだろう。
ザック・ネト(内野手)評価 C
不振のフレッチャーの代わりに昇格させたまだ22歳のルーキーだ。昇格直後は全く打てなかったが徐々にメジャーのスピードに慣れ、打率は.224まで上げてきている。若いが守備のセンスも素晴らしい。昨年の自動アウトマシーンだった内野のバックアップよりはずっと良い。すでに6死球というのが気がかりで、ケガだけは気を付けてもらいたい。
マット・タイス(捕手)評価 B
オホッピーがシーズン終了の手術となったため急遽マイナーから引き上げられた。いきなり打撃妨害を連発しどうなることかと思ったが、その後はまずまずの成績を上げている。打率こそ .214と低いがOPS は8割を超えており、出塁率もトラウトに次ぐチーム2位の.374である。
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