昔は良かったダメオーナーのモレノ
今でこそエンゼルスのオーナーであるアルトゥロ・モレノは金の亡者、ダメオーナーの烙印を押されているが、2003年に球団を買った直後はチケットやビールの値段を下げるなどファンの好感度は非常に高かった。どちらかと言うと球団経営に意欲の見られない前オーナーのディズニーと比べると、球団経営に情熱を燃やす新オーナーはファンからはとても好意的に見られていたのだ。実際モレノはホーム・アウェイと問わずスタジアムを訪れて観戦し、時にはファンと直接コミュニケーションを取るほど熱心だった。
良くも悪くも球団経営に関心のなかったディズニー
前オーナーのディズニーはエンゼルスをディズニーランド集客のためのツールの一つとしか見ておらず、良くも悪くも球団経営にはあまり関心がなかった。そのため経営はその道のプロに任せっきりで、逆にそれが奏功してチーム強化が上手く行き、2002年には球団史上初のワールドチャンピオンにも輝いた。ワールドシリーズには当時のディズニーのトップも来ていたが唐突感は否めず、にわかファンがはしゃいでいるようにしか見えなかったのを思い出す。
全米プロスポーツでナンバーワンチームの評価(ESPN)
モレノの買収から数年の間はディズニー時代の遺産でチームの成績は良く、毎年のようにプレーオフにも進出していた。チケットの値段はお手頃になり、チームの注目度も上がってファンは幸せだった。
その頃ESPNは毎年、プロスポーツチームの総合ランキング「Ultimate Standings」発表していた(2016年を最後に現在は発表していない)。これは全米に122チームあるプロスポーツチームの強さやファンの満足度、お得感などあらゆる面を調査して総合的にランキングしたものだ。
そして2009年はエンゼルスが栄えあるナンバーワンだったのだ。MLBだけではなくNBAやNFLなど全てのプロスポーツチームで第1位となった事は凄い事だった(今では想像もつかないが)。
下のように各部門の詳細を見て行くと、コスパや成績、チーム状態なども高順位だが、オーナーシップですら122チーム中11位とモレノはメディアからも極めて高く評価されていたのだ。この時点では!
- 前年順位 6位(122チーム中)
- Affordability(値段の安さ)5位
- Coaching(チームの指導力)5位
- Fan Relations(ファンへの対応)8位
- Ownership(オーナーの質)11位
- Players(選手の質)14位
- Stadium Experience(スタジアムでの体験)16位
- Title Track(優勝を狙える可能性)1位
- Bang for the Buck(コスパ)6位
ちなみに当該記事はESPNのサイトからはすでに削除されているが、ランキング自体はネット上のあちこちに残っている。
ディズニーの遺産を食い荒らしたモレノ
しかし次第に独裁色を強めたモレノは自分の気に入った選手の獲得をゴリ押ししては、対価としてプロスペクトやドラフト指名権を手放し続けた。モレノはディズニーの遺産を食い荒らし、チームはみるみるうちに弱体化していった。
エンゼルスのマイナーのコーチの待遇や報酬はメジャーでも最低レベルで、毎年のようにコーチ陣は入れ替わった。そのため選手への一貫した指導ができず有望プロスペクトの育成も全く上手く行かなくなった。選手のスカウトも減らされ、良い選手が入ってこなくなった(特に中南米から)。マイナー選手の待遇も最低で粗末な食事しか用意されなかったと選手から暴露された。
また最近一気に進んだデータ分析への対応も遅れ、デジタル投資を進めたライバルとの差は開く一方。エンゼルスの選手のクセはエンゼルスのコーチや選手本人よりも相手チームの方がよく知っているという有様だった。
モレノ最大の罪は失われたチームカルチャー
2000年代は投手力を中心に、バントや走塁を駆使して効率よく点を取るスモールベースボールがエンゼルスの代名詞だった。しかしモレノの指揮の下、メジャー組織が巨艦主義に陥るとマイナーの指導者も選手も多少守備や走塁に問題があっても一発打てれば良いという価値観が主流になり、守備や走塁はイマイチのフリースインガーばかりが育成された。現在ではチームで点を取るというカルチャーは完全に失われたと言っても良く、多少失点しても打ち勝てばいいという戦い方しかできなくなった。
エンゼルスのファームの評価が低いのは有力選手が少ない事もあるが、とにかくブンブン振り回すフリースインガーばかりで、チームで点を取る、チームのために自己犠牲も厭わないというチームのカルチャーが失われてしまったことが最大の問題だと私は思っている。
モレノについてはこちらの投稿もご一読を。チーム紹介 2023年(監督、GM、オーナー編)
コメント
バーノン・ウェルズの獲得辺りから、オーナーの癖が強くなった。
そして、同時期にマイク・トラウトという、最高の新人が現れ、それを
サポートする感じでプーホールスとかの大型打者を長期契約で獲りまくり
反比例して、投手補強がおざなりになっていった。
トラウトが出現してから、エンゼルスはチームの舵取りを間違えて
今に至っていると思う。
個人的には、短縮になった2020年が惜しかったかな。
レンドン、トラウトが活躍して、ウォルシュが覚醒、けど、大谷が隠していた体の故障
で絶不調、この年は「大谷だけが」だった。でも翌年から現在迄、逆の意味で
「大谷だけが」になってしまった。